孤高の天使



「イヴ、貴方の役目はもう終わりました。魔王様も度重なる天使との対峙でこれほどに力を摩耗し、尽きる寸前。貴方が目の前で死ねばどんな世界が見れるんでしょうね」

「地位も権力も世界もくれてやる。だがイヴだけは死なせはしない」

「貴方は本当に昔から口を開けば“イヴ”ばかりですね。仮にも元天使なのですから他の者も助ける度量も見せたらどうですか?」

「昔も今もイヴだけが俺の全てだ」


ラファエルとアザエルの決定的なその言葉にラナは小さく息を飲んだ。




『すぐに理解できないと思う。ううん、理解しなくていい…今は私を信じて』


藁をもすがる思いで呼びかければ、ラナは私の問いかけに応える様に力強く手を握った。




「イヴ」


突然低い声で呼ばれた事にビクッと肩を揺らし、視線を上げる。

一瞬ラナとのやり取りがばれていたのではないかと焦ったが、アザエルは口の端を持ち上げてフッと笑う。




「貴方がミカエルに告げた言葉を覚えていますか?」

「何のことですか」


突然問われたそれに何も考えずにそう答えた。




「貴方は“誰も恨まない、憎まない”と言いましたね?」

「はい」


迷わずに頷くと、アザエルは馬鹿にしたように鼻で笑った。