「私はあの過去を知ることが出来て良かったと思っています」
ハッと息を飲んだのが分かり、視線を空から降ろせばやはり驚いた顔をしているラファエル。
私が微笑めばラファエルは益々訝しげな顔をした。
「ずっと過去の記憶を封じられたままだったらラファエル様と過ごした日々の事を思い出せずにいたままだったと思う。それに…ラファエル様の痛みに気付いてあげられなかった」
漆黒の髪をそっと分け、涙の跡が残る頬に触れる。
「私がラファエル様の記憶を消し損ねて先立った時から数百年間、ずっと辛い想いをさせてしまってごめんなさい。ずっと独りぼっちにさせてしまってごめんなさい」
ゆっくりとひとつひとつの言葉を言い聞かせる様に口にする。
目を丸くして驚くラファエルに愛おしさが込み上げ、目じりに涙を浮かべてふわりと微笑む。
「私のことをずっと想っていてくれてありがとう」
やっと伝えることが出来た…
ラファエルにずっと辛い想いをさせた事は本当に胸が痛く、謝罪の気持ちでいっぱいだった。
けれどそれよりもラファエルがこうして数百年もの間、私ひとりを想い続けてくれていた事が嬉しい。
「イヴ…」
私の手に大きな手が重なる。
そしてどちらともなく近づく距離。
しかし…―――
『させませんよ』
頭の中に直接響いてきた声にハッとして目を見開く。
声はラファエルにも聞こえていたようで、鋭い視線で私の後ろを睨む。

