もうこれ以上ラファエル様が苦しんでいるところは見たくない。
けれどもう一度あの綺麗なアメジストの瞳に私を写してほしい。
もう一度あの優しくて温かな声で「イヴ」と呼んでほしい。
ギュッ…――――
傷つくのも忘れてラファエルの背に腕を回して抱きしめる。
『ラファエル様…お願い…目を覚まして』
私の体も聖力も限界が近づいていた。
意識が遠のく…―――――
目眩のような感覚が襲い手足が痺れる。
闇の濃度が上がってきているのだろう、このままでは私が消えるのが先かもしれない。
息が……しづらい…
ひと呼吸ごとに体力が奪われ、乾いた呼吸を繰り返す。
ついにはラファエルの黒衣を握る手が滑り落ち、もたれ掛かるように倒れ込んだ。
しかし受け止めてくれる腕はなく、力なくずるずると落ちていく私の体はかろうじて広い胸の中に収まっている状態。
かろうじて動く腕を持ち上げ、痺れて動かない指先でラファエルの頬に触れる。
頭はラファエルの胸にもたれ掛かったまま動かないため、ラファエルの様子は分からないが、まだあちら側にいることは確か。
『ラファエル様…』
ラファエルの心の深層まで届くよう強く念じて思念をとばす。
私の声に反応してくれたのだからまだ希望はある。
そして希望がある限り私は諦めない。

