孤高の天使



「そもそも大天使としてそれなりの力はあれど、ラファエルはおろか私の足元にも及ばなかったお前が神になれるわけがなかろう」

「私だってそう思っていました」


私が次の神に選ばれるはずがないと。

同意するようにそう言えば、ミカエルの高笑いがぴたりと止む。





「本当なのか?」


ゴクリと唾を飲み込んでそう言ったミカエルにコクンと頷いた。

するとそれまで平然を保っていたミカエルの表情に動揺が垣間見えた。

目を泳がせ唇を噛む様は、私の言葉を信じても良いのか迷いあぐねている様子だ。




「信じられないというのならそれでも良いです。どうせ過去のことで、今最も神に近いであろうお人はミカエル様なのでしょうから」

「そ、そうだ…あれは全て過去のこと。ラファエルもお前もいない天界で神に相応しいのは私だけだ」


ミカエルは自身に言い聞かせるようにして呟き、狂ったような笑みを零した。

瞬間、ミカエルの狂気に反応するように闇の粒子が膨れ上がる。

ラファエルの周辺にも濃密な闇が立ち込め、肌に触れたところがバチッと音を立てて拒絶した。




「クソッ…」


これにはミカエルも悪態をつき、濃い闇の粒子から逃げる様に後ずさった。




「私の手で直接葬ろうと思っていたが…まぁいい。ラファエルはおろか助けにきたお前も闇に飲まれるのは時間の問題だろう」


ククッと愉しくて仕方ないように笑いを堪えたミカエルは四枚羽を出現させた。

そしてそのまま四枚の羽を同時に羽ばたかせ、闇の粒子の薄い宙に浮く。