それもそのはず。

これから私はラファエル様の元へ空間転移する。

けれどこれは今までの様な空間転移ではない。



アメリアのように複数の悪魔の力を結集してつくったわけではなく。

アザエルのように自在に空間転移ができるわけでもない。

この空間転移はたった一人と一匹で作ったものだ。



故にその完成度は低く、不安定。

一度空間転移が始まれば止めることができないからこそリスクが伴う。




しかし、私はラファエル様を助けると決めた。

もう一人にはさせないと強く心に刻んだ。





だから―――――


「ルーカス、お願い」

覚悟を決めた私に、ルーカスは頷く。



「我を失うなよ、イヴ。ルシファー様の事だけを想え。強く想えば導いてくれる」


そして、円陣に書かれた文字すべてに光が行き渡ったのを合図に溢れんばかりの光に包まれる。

ベールのようにふわりと降りかかってきた光が私の体を包んだ時、ぐるりと体が反転するようなあの感覚が襲った。

視界がぐにゃりと歪み、空間の狭間に飲み込まれる。






「ルシファー様を頼んだぞ」


ルーカスの声を最後に私は転移した――――