『これが終われば私の願いは叶う。そうすればお前もラファエルの元へ送ってやる』
『そろそろいいですか?』
ミカエルの言葉を待っていたかのように割って入ったアザエル。
アザエルの問いかけにミカエルは短く『あぁ』と答えて笑った。
『やりなさい』
アザエルの声にそれまでぴくりとも動かなかった四枚羽の天使がアザエルの命を受けて足を踏み出す。
ミカエルから聖剣を受け取り、ラファエルのいる闇の中心へ近づく。
すでに闇は濃さを増し、地面はもちろん大気にも闇の粒子が舞っている。
最も闇の濃い地面に足を着けていなくとも大気に舞う闇の粒子に阻まれる四枚羽の天使。
闇の粒子に触れた肌が焼けただれるようにジュッと音を立てて小傷が出来るが、痛みという感覚も無くした四枚羽の天使は表情一つ崩さずラファエルの元へ飛び続ける。
そしてラファエルの真上まで到達し、四枚羽の天使は聖剣を大きく降りかぶった。
「やだ…だめ……」
為すすべ無く鏡の前で見ているだけの私はただ力無くその言葉を繰り返すことしか出来ない。
ドクン、ドクンと心臓が大きな音を立て、高く上げられた聖剣にギュッと目を閉じる。
ビュンッ…と聖剣が空を切る風音の後、バチッという大きな音が耳に入った。
恐る恐る目を開けてみれば四枚羽の天使が振り下ろした聖剣はラファエルに触れる寸前で止まっていた。

