孤高の天使




『お前に何が分かる。神の座に興味があるでもなくただラファエルの隣で能天気に笑っていたお前に私の気持ちが分かってたまるか!』


荒らげた声がダイレクトに頭に響き、言葉を失う。



『私は昔からラファエルが嫌いだったが、お前も大嫌いだったんだよ、イヴ。ラファエルを陥れ、お前も消えてくれたと思っていたのに何故再天したのだ…』


ミカエルは厳しいところはあれどこんな風に声を荒げて自我を剥き出しにすることはなかった。

けれどこれは長年にわたり蓄積されたミカエルの想いそのものなのだ。

そしてその言葉の裏には怒りだけではなく、哀しみも含まれていたように思う。



誰よりも努力してきたのに一番にはなれない虚しさ。

そして誰よりも理解してほしい人に理解してもらえない悲しさ。


私たちはミカエル様の心の内に気付いてあげられなかった。

神もそれを後悔しているとどう言ったら伝わるだろうか。




否、今のミカエルには何を言っても駄目なのかもしれない。

最初は嫉妬や羨望で生まれた小さな闇は本人が知らぬ間に大きく育った。

そしてそれはやがて取り返しのつかない大きさまで膨れ上がって、自分では制御できない程になっている。

ラファエルを滅しても神の座にはつけないということもきっと分かっているのに。

それでも長年蓄積された闇に囚われる様にラファエルを滅することを選ぶのだ。




ミカエルは止められない―――


けれどラファエルが滅せられてしまえば全てを裏で操るアザエルの思う壺だ。

焦る私にミカエルは口角を上げ、歪んだ笑みを見せる。