「あれは!」
大きな声を上げた私にアザエルは「あぁ…」と言って微笑を浮かべた。
「あの方の聖剣です。部屋に飾っておくだけでは勿体無いのでいただいてきました」
四枚羽の天使が手にしていたのは数百年前ラファエルが持っていた大剣だった。
あれは聖剣だからか四枚羽の天使が手にしても拒否反応はない。
つまり最悪あの天使がラファエルの元へたどり着けなかったとしても、聖剣を手にする替えはいくらでもいる。
だからこそアザエルは余裕を保っていられるのだ。
『ミカエル、貴方がやりますか?』
『いいえ、やめておきます。自分の手を汚さないでいられるならその方がいいですから』
なんて卑怯な…
漏れ聞こえてきた二人の思念に怒りと悲しみがこみ上げてくる。
このままではラファエル様が消されてしまう…
「お願いしますミカエル様。その人たちを止めてください。こんなことをしても神にはなれないことを知っているでしょう?」
一か八かで叫べば、鏡の中のミカエルがピクリと反応を見せた。
声が届いていると分かり、たたみかける様にして口を開く。
しかし――――
「ミカエル様は昔から聡明で、誠実で、天界の誰よりも正しくあろうとしてきたじゃないですか」
『黙れッ!』
訴えかけた言葉はミカエルの逆鱗に触れた。

