『私の為に再び死んでくれ、イヴ』
アメリアが目を見開いた直後―――
『やめろッ!』
「ミカエル様!だめぇーー!」
ドンッ…――――
何かがぶつかる鈍い音の後、砂埃を上げる音がした。
恐る恐る目を開いてみれば、鏡の中には地面に仰向きになっているミカエルに伸し掛かったラファエルが映っていた。
良かった…間に合った……
そう思われた直後、ミカエルがニヤリと笑った。
『残念だったな』
そう言ったミカエルの手には魔剣は握られていなかった。
ラファエルが紅の瞳を見開き、弾かれたように囚われたイヴを振り返った瞬間。
ザシュッ…――――
手を伸ばすラファエルの前で、四枚羽の天使によって振り下ろされた魔剣が深々とアメリアの胸に突き刺さった。
『イヴッ!』
咄嗟に腕を伸ばし、アメリアに駆け寄るラファエル。
しかしラファエルが私の姿をしたアメリアに到達する寸前でアメリアの姿はパンッと弾けるように粒子となって消え去った。
ラファエルの伸ばした腕は粒子を掻き抱く様に宙を掠めた。
その腕はイヴには届くことはなかった……
掻き抱く存在もなくそのまま地面に両手をつき項垂れるラファエルの背を見て涙が込み上げる。

