『それ以上言うな。今のイヴに過去の話は聞かせたくない』
捕らえられたイヴとミカエルを交互に見てそう言ったラファエル。
その光景を見て胸が熱くなった。
ラファエルはこんな状況でもあの過去から私を守ってくれようとしているのだ。
私が記憶を取り戻し、ショックを受けてしまうのではないかと案じて。
自分の方が数倍も傷ついて悲しみに暮れた日々を過ごしてきたというのに。
しかし、ミカエルはそんなラファエルを更に追いつめる。
『そうか。だがいいのか?何も知らないまま死なせて』
そう言ってミカエルは四枚羽の天使たちが拘束してるイヴの胸元に剣を突きつける。
「あれは…」
『何故それがここに』
私とラファエルの声が重なる。
驚くのも無理ない。
ミカエルが手にしていたのは、過去に私たちを襲った魔剣。
今はラファエルの部屋にあるはずのものだった。
ミカエルは魔剣をイヴの胸へ突きつけ、ニヤリと笑った。
まるで過去を思い起こさせるような光景にラファエルは動揺した。
『ッ…イヴは関係ない。お前の目的は俺だろう』
数百年前と同じ台詞を口にするラファエル。
『違うな。私の目的は神になること。お前が堕天したことで強力な神候補は消え、数百年かけて選ばれたガブリエルとウリエルも脅威とは言えなかった。…だが、神はイヴを再天させ再び神候補とした』
ミカエルはそれが指す意味が分かるか?とラファエルに問う。

