『残り一人の大天使を選ぶ前に神は決めていた。“次の神にはラファエルを据える”と』
「え…?」
ミカエルが憎らしげに口にした言葉に思わず声を上げた。
だって次の神は私だと神は言っていた。
そのために能力を一つずつ継いでいたとも。
例えミカエルを神として選ばずともラファエルが次の神などという嘘をつくとも思えない。
とすると、至る考えは一つのみ。
バッと私を拘束する者を振り返れば、アザエルがさも愉快そうに笑った。
「私がミカエルに助言したのですよ。あの頃の彼は自暴自棄になっていましたからね。操ることはたやすいことでした」
誰もが持っている羨望や嫉妬を煽り、憎悪へと変えていく。
そんな人の弱みにつけ込むアザエルの手口はとても卑怯だと思った。
『私はお前と神が憎くてたまらなかった。私こそが神の座に相応しく、私こそが神となるべき天使だったのに…』
もう数百年も前のことなのに、当時受けた屈辱と憎悪はミカエルの奥底に根深く植え付けられていた。
しかし、そんなことを知る由もないラファエルは身勝手なミカエルの言葉に怒りを露わにする。
『そんなことで…俺を神の座につかせまいとしてその四枚羽の天使たちに俺を襲わせたのか』
『あぁ、そうだ。この天使たちはある方から頂いた私の“駒”。たとえ六枚羽と言えどお前を確実に闇に葬ることが出来ると思っていたのだが、あの場にイヴがいたことは誤算だった』
“イヴ”の名が出た途端、ラファエルの顔に緊張が走る。

