『イヴをここに』
ミカエルの声を合図に四枚羽の天使がイヴの両脇を抱えてやってきた。
『イヴッ!』
まさかこの場にイヴが現れると思っていなかったラファエルは驚き、声を上げる。
その焦った様子にミカエルは形勢逆転とばかりに口角を上げた。
『んんーーッ!』
口を塞がれたイヴはくぐもった声でラファエルに何かを訴えかける。
ルーカスは鏡の中のイヴに驚いている様子だが、私にはその正体が分かっていた。
「私の姿になったアメリアさんを操っているんですね」
軽蔑の色を顔にのせてアザエルを睨めば、アザエルはおどけた様子で「おや、分かりましたか」と言う。
「アメリア!?そういう事か…」
ルーカスもアメリアの能力を知っているのか、納得したように呟いた。
「なんて卑怯な……」
「なんとでも。さぁ、ここからが見物ですよ」
してやったりのアザエルが涼しい顔をして私の言葉をかわし、にこりと笑う。
魔界にラナがいるはずがないと思っていたにもかかわらず、のこのことついていった自分を恨んだ。
ラファエルが騙されないことを祈るが、アメリアは口を塞がれている。
アメリアのコピー能力は完璧で、容姿はうり二つだ。
加えて、魔界でラファエルと別れた時の服や薬指につけていた銀色の指輪まで身につけさせている。
アザエルの用意周到さから考えて香水の匂いも消しているだろう。
ここまで似せられてしまえばラファエルが気づく可能性は低い。
『お前の目的は何だ。イヴを捉えたのは神の差し金か』
『神の?フッ…違うな、全て私の意志だ』
案の定目の前の“イヴ”に騙されたラファエルにミカエルがほくそ笑む。
そしてその正体を露わにした。

