ビュンビュンと風を切り空へと飛躍するラバルとフェンリル。

そのスピードと風圧に目を閉じてしがみつくのでやっと。

駆け上がるラバルの足が止まり、ふわりと体が浮くような感覚がおそう。

宙で静止したのだと分かり、堅く閉じていた目を開く。

目に飛び込んできた光景は見渡す限り緑が敷きつまった大地。




「ここは?」


天界でも訪れたことのない場所に思わず呟く。

いつもなら悲鳴を上げそうなほどの高度にいることも忘れていた。




「天界の外れだ。俺たちはルシファー様のところへ向かおうと思ったんだが、中心部には近づけなかったんだ。まぁ天界の外れから入った結果、お前の声に呼び寄せられていたそいつに見つけられたわけだがな」


ルーカスに指を刺されたラバルは誇らしげに鼻を鳴らした。

先ほども不思議に思ったが、何故ラバルは私の声が届いたのだろう。

もしかしてあの時叫んだ声が届いたのだろうか。



まさかね…

ほとんど聖力のない私に結界を越えるほどの思念を飛ばすことなどできないから。




「ルシファー様のいる中心部までどれだけ近づけるか分からないが、行けるところまでいくぞ」


フェンリルに跨りいつになく頼りがいのある言葉を口にするルーカスに向かってしっかりと頷く。

ルーカスは私が頷いたのを確認してフェンリルにしがみつく。




「一気に駆けるぞ。振り落とされるなよ」

「ラバル、お願いね」


私の言葉に応えるようにクーンと鳴いたラバルに体をピタリとくっつけて振り落とされないように銀色の毛並みにしがみついた。