しかしラファエルの元へ早く行こうと思うのなら一頭に対して一人だけだろう。

その場にいた皆は一瞬にして誰がラバルとフェンリルに乗るべきかを察した。




「僕たちはここに残って神様を守るよ」

「魔王様と一緒に帰ってきてくださいね」

「お願いね、ルル、イリス、リリス」


子供であるルルはもちろんの事、イリスとリリスが残ると判断してくれたことに安堵する。

本当はルーカスにも残って欲しかったが、本人には全くその気がないらしく、すでにフェンリルに跨っている。

高等魔獣であるフェンリルも今日ばかりはしょうがないと思ったのだろうか、普段はラファエルしか乗せないその背にルーカスを乗せることを許している。

ラバルは体を低くおろし、尻尾を振って待つ姿を微笑ましく思いながらその背に乗る。

ふわりと柔らかい毛並みに体を預け、ラバルの体をしっかりと掴む。





「ルーカス、イヴ様を任せたわよ」


イリスの琥珀色の瞳がルーカスを見据える。



「あぁ、行ってくる」


これから待ち受けることを思ってかルーカスの声も硬い。





「行ってらっしゃいませ、イヴ様。お気をつけて」


不安気なリリスの声にコクンと頷き、ラバルとフェンリルの躰が浮く。

そしてグッと宙を踏みしめるようにして一気に空へ跳躍した。




「イヴお姉ちゃん!僕たち待ってるからね!絶対帰ってきてね!」


空高く駆け上がるラバルの背にしがみつくだけで精いっぱいだった私の耳にルルの声が届く。

声の限り叫ばれたその言葉を深く胸に刻んだ。