『イヴ』
頭の中に響く声にハッとする。
微弱ではあったが確かに届いた。
聞こえていたのは私だけではない様で、ルーカスたちも訝しげな表情をして辺りを見回している。
「神様」
「神だと!?」
ピクリと反応したルーカスが一瞬にして険しい顔つきになる。
ルーカスたちにとって神は四枚羽の天使を裏で操って自分たちを堕天させた張本人だと思っている。
しかし私が結界の繋ぎ目があったであろう地面に手をつくのを見てルーカスが訝しげな顔をする。
「何で神がこの中にいるんだ?神は天界の中心部にいるはずだろ」
まさか私と一緒に神が捉えられていたとは思わないルーカスは困惑した顔をした。
「神様はミカエル様によって数百年前からこの結界の中に囚われていたの」
「ミカエル様が!?」
驚いたルーカスに私も驚いたが、考えてみればミカエルはこの数百年間ずっと大天使の座に就いているのだ。
元天使だったルーカスが知っていてもおかしくはない。
「ミカエル様は神の座に就きたいがために神をここへ封じこめ、アザエル様はこの世界の支配者になるために私を利用してラファエル様の闇の力を引き出そうとしている…」
「じゃぁなにか?あの四枚羽の天使たちはミカエル様の命で動いていたのか?」
「正確にはアザエル様に操られていた四枚羽の天使をミカエル様が使っていたの。アザエル様にとって神を憎む存在が増えることは喜ばしいことだったから」
色々と言葉足らずな説明だったが、堕天させられたルーカスは困惑しながらもおおよその事情を察した。
そしてずっと自分の敵だと信じて疑わなかった者を違えていたことに喪失感を覚えた様に呆然としていた。

