「これ以上この結界を開いているのは無理だッ…急げ!」
閉じようとする結界を抑えながら叫ぶルーカス。
その焦った声に私も決断せねばと焦りが生まれる。
私が今すべきことを叶えるために取るべき選択は…
「神様、私は行きます」
決断した私に神は微笑み、頷いた。
少なくともここにいる限り神の無事は確実だ。
それにミカエルは自身が神になるまで神を生かしておくだろう。
だから、神様はここにいるのが一番安全だ。
そして私は掴んでいた神の手を離す。
すると私の体は上昇気流に押されているように浮かび上がる。
「必ずラファエル様を助けます!」
空にあいた穴に向かって流れる風に身を任せ、ゴォ…という風音の中、遠ざかっていく神に向かって叫んだ。
そして体をくるりと反転させ、自身の羽を具現化し、こちらに手を伸ばすルーカス向けて羽をはばたかせる。
神の力だけではルーカスのいるところまでは到達できず、自分の力で飛んでいくしかなかった。
幸いにもここは天界で聖なる力に満ちているからか、からっぽだった聖力は満ちていた。
しかし、満ちていても結局は聖力を封じられている身だ。
長く、そして高く飛べるには限界があり、精一杯羽をはばたかせても何故かルーカスのいるところまで到達できない。
これも結界内に閉じ込めた者を外に逃がさないためにつくった結界の特質だろうか。
重力が何倍にも押しかかってくるようで体が重い。

