「私は貴方が持つ未知数の力に期待をしていたからです。天界の天使たち、バトラエル、ミカエルやラファエルでさえも気づいていなかったようですが、貴方には未知なる力があります。封じられていようとも貴方は元大天使なのですから」
あどけなさの残る少女の笑顔でそう言った神。
「けど…」と開きかけた口は目の前にかざされた神の手によって閉じられる。
そして神はゆっくりと首を横に振って、私にニッコリと笑みを見せた。
「神の私が言うのですから大丈夫です」
「分かりました。やってみます」
どこか有無を言わせないニッコリ笑顔にしぶしぶ折れ、半ば神の言葉に押される形で返事をした。
しかし思念をとばすなど意識をしてやったことがないだけに少し戸惑う。
思念をとばすということは、私の想いや心の声を遥か彼方の相手まで届くように念じるということなのだろうか。
きっと思念をとばすのにも聖力の大きさが関係するのだろうが、今は自分の聖力がどうこう言っている暇はない。
神を信じてやってみるしかないのだ。
すぅ…っと息を吸い込み、霧に覆われたような灰色の空を見上げる。
そして、目を閉じた―――
耳に届くのは大樹の周りに流れる静かな水音だけ。
瞼の奥では今一番会いたい人を思い浮かべていた。

