孤高の天使




「生まれ変わって幸せな人生を歩んでほしかった。けれど、人を殺めてしまったアザエルを天界へとどめておくことは出来なかったのです」


神が“禁忌”と言った理由がやっとわかった。

アザエルの両親を神への供物とした人々と村人たちのこと。

つまりアザエルは関わった村人全てを殺めてしまったのだ。

罪の重さは数で決まるものではないが、死という取り返しのつかない悲しみは残された者の記憶に強烈に残る。

しかもアザエルが奪った命は多く、その者たちの遺族の悲しみもまた大きかったことだろう。





「だからアザエル様を堕天させたのですね…」


私の言葉に神は苦渋の色を浮かべて頷いた。




「しかし私が堕天させたことでアザエルの憎しみは増しました。そしてもうその時には自分の家族を神への捧げものとした人間への復讐は薄れ、この世の全ての破壊を目的とするようになったのです」

「けどどうやって……」


世界は広く、全ての破壊などアザエル一人で成し得ることではない。

アザエルはどうやってこの世界を滅ぼそうとしたのだろうか。

そんな時、ふと浮かんだ考えに嫌な予感がよぎった。





「ッ…まさか…ラファエル様?」


掠れた声で浮かんだ考えを恐る恐る口にした。




「えぇそうです。アザエルはラファエルの闇の力を利用しようとしています」

「闇の力……」


いまいちピンとこない単語を口に乗せながらポツリと呟くと神は続けて話し始める。



「見たでしょう?貴方を失った時に発動した力を…あれは貴方を失った悲しみで生まれたものでもありましたが、“闇”はラファエルが生まれ持った力の一つでもありました」



ラファエルの力は闇―――

それはあの漆黒の髪と瞳に関係しているのだろうか。