「アザエルは両親を殺した村人を、貧しい国をそしてこの世を統べる神を憎んだまま幼くして死にました。そしてそれは天使として生まれ変わっても変わらなかった…」
幼かったアザエルが両親の助けなしに長くは生きられなかったことは明らかだ。
そしてそんなアザエルに手を差し伸べてあげる人々がその村にいたとは思えない。
天使は純粋なまま死んだ者しか生まれ変わることは出来ない。
しかし例え憎しみを抱えたまま死のうと、小さいころから父親を手伝い、一生懸命働いてきたアザエルは純粋であり天使として生まれ変わるには十分な条件だったのだろう。
「天使となったアザエルは私を憎む想いを持ったまま生まれ変わり、前世の記憶を濃く受け継いでいました。そして、人を意のままに操ることが出来る能力を持ったアザエルは自らの家族を神への供物にした人々を殺したのです」
「ッ……!」
驚いたのは一瞬、そして次に湧き上がったのは胸が締め付けられるような悲しい感情だった。
きっと愛する人を奪われたら身を引き裂くように辛いのだろうが、結局のところ愛する人を奪われた人の気持ちなどその人にしかわからない。
イヴを失ったラファエルもまたそのうちの一人。
ラファエルは直接手を下したわけではないが、イヴを失った時に発動した闇で天使四人の命を奪った。
けれど、それで心は晴れたのだろうか。
辛くて、悲しい過去の傷は癒えたのだろうか。
否、それは今のラファエルを見ていれば分かる。
愛する人を奪った者がこの世からいなくなろうと心にぽっかり空いた穴を埋めることなど出来ない。

