孤高の天使



「けれど、そんな幸せな一家を悲劇が襲ったのです」


声を落とした神の表情は悲しそうに歪められていた。




「当時、人間界で起きる戦や貧困からか神への熱狂的な信者が後を絶たず、その信仰は時に間違った方法で行われることがありました。アザエルの住む国でも貧困から神への供物として様々なものを捧げて人々は祈りました」


私たち天使も毎朝神へ祈りをささげる。

けれどそれはこの世界の創造主たる神に感謝をして、全ての息づく者たちの幸せを祈っているのだ。

そして神は私たちの祈りを糧に天界と人間界を統べている。

供物を捧げたから人々の願いを叶えてくれるというのは人間界での伝承にすぎない。




「しかし一向に貧困からは抜け出せず、人々は更なる供物を探しました…そして行き着いた果てが“人”です」

「ッ…それってまさか…」


息を飲んで驚愕した私に神は弱々しく頷く。





「そうです。人々は神への捧げものとして人間を差し出すようになったのです」


予想はしていたものの神の口から告げられた話の衝撃は大きかった。

供物として人を差し出すとはすなわち人柱になるという事だ。





「そして白羽の矢が立ったのがアザエルの家族でした…アザエル一家は逃げようとしましたが村人から捉えられ、人柱として殺されたのです」


いくら神に供物を捧げようと貧困からは抜け出せない。

そんなことは分かっているだろうに、それでも人々は救いを求めてしまうのだ。

貧困や飢餓から抜け出したいと欲し、その欲は時に人々を惑わす。

アザエルの両親を人柱とした村人たちも正気の沙汰ではなかったのだろう。