孤高の天使



「アザエル様は何故そんなにも神様に執着するのですか?」

「堕天させた私の事を憎んでいるからです」


神は苦しそうに眉を寄せそう言った。

その表情から並々ならぬものを感じ、緊張の面持ちで神の言葉を待つ。





「貴方たちが天使として生まれるよりもずっと前、アザエルは禁忌を犯しました」

「禁忌?」


禁忌とは天界で最も罪の重い行為をいう。

私が知る限り天界において禁忌を犯した者はおらず、いないからこそ禁忌と呼ばれる罪状を知らない。





「天使のほとんどは純粋なままこの世を去った哀れな魂の生まれ変わりだと言うことは知っていますね?」


神の問いにコクンと頷いた。

純粋なまま死を迎えた人間に神が慈悲を与えて天使として生まれ変わることは天使であるものなら誰でも知っていた。




「アザエルの前世はある小さな国の貧しい家に生まれた人間でした」


神は静かにアザエルの過去を語り始める。

なんだかあのアザエルの過去を神の口から聞くのは不思議な感じがした。




「父親は身分が低いために限られた狭い土地で農業を営み、母親は隣町まで出稼ぎに行き、アザエルは同年代の子供と遊ぶことなく父親の手伝いをしなければならないほど貧しい家でしたが、アザエルの家族は貧しくても幸せな生活を送っていました」


神は全ての息づく者の存在を感じられる。

けれど神とて全ての者を観ることは出来ない。

そんな中、神がこんな風に話すということはアザエルの事を気にかけていたという事だろう。