消えた記憶の鍵となっていた夢も、激しい頭痛から逃げてその過去を知ろうとはせず。

耳元で囁かれる貴方の声にただ身を任せて無意識のうちに逃げていた。







『君をまた失うなど俺には耐えられないんだ』



『生きていれば必ずどちらかが先に死ぬ。なら俺は君より先に死にたい』



『君の死など見たくない……だから、君が俺を殺してくれるというなら喜んで受け入れるよ』





私に向けられていた数々の言葉の意味が今繋がる。





『神が再び俺たちを引き裂こうとするなら…君を手離すなら…世界が壊れてもいい』


『俺への感情を忘れていることがイヴの幸せにつながっているのなら、それでいい』




いつだって貴方は自分の気持ちを犠牲にして私をあの過去から守ってくれていた。

数百年前から変わらない想いでずっと。




「ふっ…ひっく……」


喉の奥がきゅっとしまり息が詰まる。

ただ守られてきただけの私が泣く資格なんてないのに、涙はとどまることを知らず溢れた。

堰を切って溢れる涙はやがて嗚咽にかわり、止まらなくなった。




「イヴ……」


全てを知っている神は私の手を引いて自分の方へ引く。

そしてその小さな体で私を抱きしめた。

今の神では私の背に回すのもぎりぎりで、抱きしめられているというよりも抱きつかれている様な形なのだが、何か大きい存在に包まれているようでとても安堵した。

背中をさすってくれる手があまりにも優しくて、声を上げて泣いた。