孤高の天使




ラファエルはイヴの言う通りに横抱きにしていたイヴの体を起こす。

地面の上にぺたんと足をつけたイヴは片膝をつくラファエルに手を伸ばす。




『きて』


ラファエルはイヴの大輪の花が咲くような笑顔に吸い寄せられるように距離を詰めた。

伸ばされたイヴの両手はラファエルの頬を包み、二人の唇が重なる。

イヴの胸に刺さった魔剣がつくる距離がもどかしかった。



触れるだけの口づけをしてゆっくり離れる二人。

見つめ合ったイヴとラファエルの間につかの間の安らぎが訪れたような気がした。

しかし、余韻に浸る間もなくイヴはラファエルの頬にあてた手を額へ伸ばす。






『イヴ…何を…』

『魔法よ』


戸惑うラファエルにイヴはただ一言そう答える。

先ほどの言葉は本気だったのだろう、イヴの言う“魔法”とやらを訝しげな表情をしてただ見守るラファエル。

そんなラファエルをよそにイヴは額にあてた手に自分の額をピタリとつける。



すると、イヴの手を通して重なり合った二人の額が淡い光を放つ。

瞬間、それまで訝しげな表情をしていたラファエルがハッと息を飲んで口を開いた。





『まさか…ッこれは……』


何かに気付いた様子のラファエルにイヴは眉を下げて微笑んだ。

けれど次の瞬間には笑顔を消して、真剣な面持ちで口を開く。




『ラファエル様…貴方は今あったことを全て忘れるの。私たちを襲ったあの天使の事、魔剣のこと、そして私の事を…』


イヴがラファエルに施しているもの、それは忘却の力だった。