余りに深刻な顔をするラファエルにイヴは弱々しく笑う。
そしてだらりと落としていた腕をゆっくりと持ち上げ、ラファエルの頬に触れた。
『ラファエル様の焦った顔なんて…久しぶり…』
ラファエルは自分の頬にあてられた小さな手を取りギュッと握った。
その時にはすでにイヴの状態を悟っていたのだろう、ラファエルはただ眉を寄せて涙を零していた。
『初めて出会った時は無視されたし、その後も暫くは笑った顔さえ見せてくれなかったのに』
『あぁ、そうだったな…』
無理してつくった笑顔、そんな笑い方だった。
『ラファエル様は私たちが嫌いだったものね』
否定しないラファエルにイヴはクスクスと笑う。
『けど…時間をかけて打ち解けて…ラファエル様と想いが通じ合った時は嬉しかった』
想い出を語るイヴの瞳にも涙が浮かぶ。
そしてイヴはラファエルにとって最も残酷な言葉を口にする。
『ラファエル様は私の大切な人だから…生きてね』
“生きてね”
それはイヴを愛するラファエルにとっては辛すぎる言葉。
愛する人のいない世界で生きる虚しさは計り知れない。
けれど刻々と別れの時間は迫っていた―――
ラファエルの頬にあてていたイヴの白い手がうっすらと透き通ってきた。
魔剣の力が働き“消滅”が始まったのだ。
手先、そしてつま先から透過を始めたイヴの体を見てラファエルがハッと息を飲む。
『もう…時間みたい』
イヴは力なくそう言って、ラファエルに微笑みかける。

