砂塵が消えた後もラファエルはイヴを胸に抱えたまま仰向きで空を見上げていた。
瞳は硬く閉じられ、口からは絶え間なく苦しそうに息が吐き出される。
胸に抱えられたイヴの白い服はラファエルの血で赤く染まっていた。
しかし、ラファエルは自分の傷など構いもせず、息が整ったのを見計らって胸に抱いたイヴを抱えて起き上がった。
魔剣が胸に刺さったままのイヴはぐったりとして動かない。
『イヴ』
震える声がイヴの名をそっと呼ぶ。
しかし硬く目を閉じたイヴから返事はない。
ラファエルは目を見開き眉を寄せた。
そして腕の中でぐったりと横たわるイヴの肩口に頭を埋める。
『目を開けてくれ…イヴ…頼むから』
ラファエルの悲痛な声がくぐもって聞こえた。
喉の奥から絞り出すようにして発せられたその声は泣いているようにも聞こえる。
『俺には君だけなんだ…君さえいてくれれば他は要らない。だから目を開けてくれ…』
すがるような想いを吐露し、イヴを抱きしめる力が強くなった。
すると…―――――
『ラ…ァ…エル…ま……』
か細く、今にも消えそうなほど小さな声がラファエルの名を呼ぶ。
『イヴッ!』
ラファエルは自分の耳元で聞こえた声に反応し、弾かれたように顔を上げた。
うっすらと目を開いたイヴを見つめる紅の瞳に元来のアメジストがチラつく。
そして揺れる瞳からは涙つたっていた。
頬に流れた一筋の涙は果たして喜びと悲しみどちらのものだろうか。

