『イヴッ!』
ラファエルの声が強くなる。
しかし、イヴは魔剣を自分の方へ向けることに集中してラファエルを見ようともしない。
ラファエルはもうイヴのしようとしていることが分かっている。
そしておそらくその先はラファエルにとって絶望でしかない。
ラファエルは項垂れ『頼む…』と口にするが、その声はイヴには届かなかった。
否、聞かないようにしているのかもしれない。
これからイヴが行おうとしていること、それは生半可な気持ちでは成し得ないことだから。
『俺を見ろ!俺を見るんだ!』
昼下がりの静かな湖に似つかわしくないラファエルの悲痛な声が響く。
その声にイヴはようやくラファエルの方に視線を向ける。
琥珀色の瞳は驚きに見開かれた後、優しく細められた。
慈愛に満ちたその表情は見る者の心を和らげ穏やかにさせる。
ラファエルは一瞬この異常な光景を忘れ、イヴの微笑みに魅入られた。
その様子にイヴは穏やかな様子で微笑んだ。
そして、申し訳なさそうに眉尻を下げて口を開いた。
『ごめんね…ラファエル様。私はやっぱり貴方が傷つくのはいやなの…』
『ッ……駄目だ…』
ラファエルはイヴの瞳を見たまま力なく首を小さく横に振る。
恐ろしく静かに呟いたラファエルは今にも泣きだしそうな顔をしていた。

