『大丈夫…これくらい大したことない』
言葉とは裏腹に苦しそうに息を吐きながらそう言ったラファエル。
その言葉にイヴは益々眉を寄せて涙を目に溜めた。
『さすがに六枚羽の天使だけあるな。魔剣がかすったくらいでは消えないか』
『消えるって……この魔剣で…ラファエル様が?』
イヴは地面に突き刺されたまま闇を纏う魔剣を見つめながら震える声で呟く。
天使が触れるのも拒絶するくらいの魔剣だ。
傷つけられればあっという間に聖力を奪い切り、死に至るだろう。
魔剣はゆっくり、だが確実にラファエルの体を蝕んでゆく。
ラファエルが瞬時に滅せられなかったのは魔剣が振り下ろされたことで深い傷には至らなかったこと、そしてラファエル自身が膨大な聖力を有していたからだ。
『イヴ…自分を責めるな。これは君がやったことじゃない』
苦しいはずのラファエルはイヴに向かって柔らかく微笑む。
ラファエルが許したとしてもイヴは自分のしたことを許せるのだろうか。
例え操られていたとしても愛する人を自らの手で傷つけたことに変わりない。
これは過去に起こった出来事であり、第三者として見守ることしかできない自分の立場をもどかしく思いながらただ固唾を飲んで見守った。
『ラファエルは滅せなければならない…あの方の命のままに…』
ラファエルを拘束したままの天使は小さく呟き、俯いた顔を持ち上げてイヴを見据える。
イヴは天使の射抜くような鋭い目つきにビクッと肩を揺らして一歩後ずさる。
『逃がさない。イヴ…もう一度魔剣を取れ』
それは催眠術のようにイヴの耳を通して体を侵食していく。
逃げを打っていた体はピタリと止まり、イヴは天使の言うがままに地面に刺さった魔剣に手を伸ばしていた。

