『四枚羽の天使三人では足りないか』
落胆とも取れない声でそう呟く天使。
ラファエルは寸でのところでイヴの向けた魔剣から体を反らして逃れたのだ。
怯えた様子でゆっくり目を開いたイヴはラファエルが無事であることにホッと安堵する。
しかし、事態はそれで終わるわけがなかった。
天使は魔剣を手にしたまま荒い息を上げるイヴの横を通り過ぎ、ラファエルを拘束する三人の天使に加わった。
『これでもうよけられまい』
四人の天使に拘束されたラファエルは悪態をついて足掻くが、完全に固定されて動けない。
『イヴ…もう一度…』
『やッ…もうやめて…こんなのいや…』
イヴは弱々しくそう言って涙を流した。
その手に握られた魔剣は再び胸の位置に持ち上げられ、腕が振り上げられる。
『体が…勝手に……っ…ラファエル様逃げて…お願い…』
『クソッ…』
イヴの悲痛な声とともに振り上げられた魔剣がラファエルめがけて降りた。
ザシュッ…――――
衣服を破く音だけではなく、身を切り裂く嫌な音が混じった。
『クッ……ハ…』
直後、ラファエルの呻き声がイヴの耳に届いた。
イヴが振り下ろした魔剣はラファエルの肩から胸へと下ろされ、黒衣を断ち切って肌まで到達していた。
破られた黒衣から覗く肌は抉られ、血がにじみ出る。
じわじわと黒衣に滲むように広がる浅黒い血を見てイヴは自分がしたことの恐ろしさにカタカタと体を震わせた。
『ごめ…なさいっ…ラファエル様…』
イヴのか細い声が震える。
そしてあれほど強く握られていた魔剣がスルッと手から滑り落ち、地面に突き刺さった。
ラファエルはイヴの焼けただれた手を見て眉を顰める。

