孤高の天使




『お前たちにとって俺が邪魔者だということは知っていたが、殺されるほどの恨みを買ったつもりはないな』


拘束されていると言うのにラファエルは不敵に笑ってそう言う。

しかし、天使はラファエルの言葉に応えず、足元に落ちていた短剣に手を伸ばす。




瞬間―――――

バチッとまるで静電気のように天使の指先と短剣の間に火花の様なものが弾ける。

それを見たラファエルは驚きに目を見開く。




『それは…魔剣か?』


天使が触れるのを拒絶するかの如く激しい火花を散らす短剣。

ラファエルが驚くのも無理ない。

魔剣とは本来魔界に在るものであり天使が所有しているはずがないものだ。

否、悪魔が聖剣に拒絶される様に天使もまた魔剣に拒絶されるため、所有できるものではない。

その証拠に天使は手が焼けただれ、魔剣を拾う事さえできていない。

しかもその拒絶反応は抗う力が強い程、つまり聖力が大きい程その反発は大きい。

四枚羽の天使となればその反動は凄まじく、もって数分と言うところだろう。





『一発で俺を仕留めなかったのが仇となったな』


魔剣を拾えずにいる天使を見据えフッと獰猛な笑みを口元に象るラファエル。

しかし、次の瞬間ラファエルの笑みは消えた。

天使は落ちている魔剣に諦めをつけ、湖の方を振り返ったのだ。

視線の先には固唾を飲んで見守っていたイヴがいた。




『コイ……』


訝しげな表情をするラファエルの目の前で天使は喜怒哀楽もつかない声でイヴを呼んだ。

差し出された手に後ずさろうとしたが、イヴの体はその意思に反して動き出す。

天使が差し出す手の方向へ一歩、また一歩と足を進めるイヴ。