憎しみのこもったミカエルの表情と歪んだアザエルの笑みを残して視界は闇に飲み込まれた。
「ミカエル様……」
真っ暗な空間の中、目の前で起こったことが信じられずにただポツリと呟いた。
まさかミカエルが神へ反逆の言葉を向けるとは考えもしなかったから。
大天使長であり、誰よりも神への信仰を重んじていたミカエルがあんな想いを抱えていたなど…
誰の心にも闇は必ずあるという神の言葉が重くのしかかった。
呆然とする私に神は声を落として口を開く。
「この日を境にミカエルは変わってしまいました。私が気づいた時にはもう手遅れだったのです」
神は小さな口をキュッと結び、俯いたその表情は後悔と悲しみに満ちていた。
何か声をかけなければと思ったが、そう思っているうちに神はゆっくりと顔を上げて口を開く。
「そして運命のあの日は訪れました。何の前触れもなく…」
その横顔は先ほどよりも辛そうで、悲しげだった。
空色の瞳が切なく細められた瞬間、真っ暗な空間に光が現れる。
目線の先、遠くにあった光がだんだん近づき、大きくなり、遂には黒一色だった世界が光で包まれた。
ふわふわと浮いていた足がトン、と地面に着いたのは分かったが眩しさに目が馴染むのに時間がかかった。
地面に足を着けた感覚と鼻腔をくすぐる匂いからここは草と花が生い茂る場所だということが分かる。
どこか懐かしい匂いに誘われながらゆっくりと目を開くと…
「ここは……」
見覚えのあるその光景に息を飲んで立ち尽くしているところに神が横に並ぶ。
「聖なる母樹の更に向こう側の湖です」
私はこの場所を知っている。

