その背からはうっすらと闇が浮かび、ミカエルの体を囲うように広がる。
握った拳が白くなり、立ち込める闇が濃くなった時―――
『その望み、叶えてあげましょうか?』
部屋に木霊するように響いた声。
『誰だッ!?』
ミカエルは弾かれたように顔を上げ、部屋を見渡す。
すると部屋の隅の床に黒い円が現れ、下から浮き上がる様に闇がせり上がる。
ミカエルは突然自室に現れた闇に包まれたものに訝しげな表情をして警戒した。
その闇は等身大の高さまで伸びると、ふわりと霧散するように霧と化した。
そして、闇の中から現れたものに私は息を飲んだ。
それは真っ黒な四枚羽と背中に流れる様に床まで伸びた白い髪を持った悪魔。
『誰だ貴様』
ミカエルは目の前に現れたそれに思い切り眉を顰める。
その人物はフッと小ばかにしているとも取れる笑みを零して答える。
『通りすがりの者ですよ』
そう答えたのはワインレッドの瞳を愉しそうに歪めたアザエルだった。
『通りすがるくらいで悪魔が天界に入れるものか。どうやって入ってきた』
ミカエルが警戒するのは無理ない。
天界には結界が張られており、許可を得るかその結界を破らない事には何人たりとも入っては来られないはずだからだ。
『どうやって入ってきたと言われましてもねぇ…簡単に入ることが出来ましたよ』
アザエルはまるで自分の家であるかのようにミカエルの部屋を物色し歩き回りながら答える。

