それも一瞬のことですぐに神を見失い、闇の波に飲まれた。
まるで海の中を彷徨っているみたいに体がふわふわとしてどこかへと流されている感覚が襲う。
だんだん闇も濃くなり息も苦しくなる。
これは記憶の中なのだから苦しくなるわけがないと頭では理解しつつも、濃密な闇は私の呼吸を苦しくさせるばかりだった。
『イヴ』
その声と共に黒一色だった世界にポっと光が灯る。
それは小さくて頼りない光だったが、頭上に現れたそれに必死に手を伸ばす。
もがいて何度も空を切りながらその光を掴もうとする。
そして指先が触れた瞬間、闇は霧散するように消え、息苦しさもあっという間に引いた。
ここはどこだろうか……
「イヴ!大丈夫ですか!?」
見知らぬ部屋の中、気づけば目の前には私の手を取って焦った様子でこちらを見上げる神がいた。
「何が起こったのですか…?」
先ほどの息苦しさが嘘のようにケロッとした顔をして神に問えば、神は申し訳なさそうに口を開く。
「私の中にある負の感情があの闇を引き起こしたのです。私のせいで貴方を危険な目に合わせてすみませんでした」
「神様にも負の感情があるのですか?」
神の口から意外な事を聞き、思わず声を上げた。
だって神と言えば生きとし生けるものへの慈悲と愛に満ち溢れている存在で、一片の穢れも、ましてや負の感情など持っているはずがないと思っていたから。
驚いた表情をしていると神は眉尻を下げてフッと笑った。

