「しかし一方でミカエルはラファエルの圧倒的な力を認めていました。否、認めざるを得なかったのはラファエルのあの六枚羽を見れば明らかですね」
正門を抜け、長い階段に足を踏み出す。
神は長い髪を引きずっていてとても歩きづらそうだった。
しかし神は長い髪を引きずっていることをさして気にしている様子もなく話を続ける。
「本来ならば天使の羽の数は聖力に比例する、つまり聖力が強くなれば羽も成長するのです」
神が言った事は天界ならば誰もが知っていることだった。
私だって四枚羽なのだからいつかは聖力が追いついてくるものだと思っていたくらいだから。
「けれど、それはとても珍しい事で四枚羽になれる天使はごく僅か。だからこそ大天使は敬われる存在なのです」
神はそこまで言って、不意に階段の途中で立ち止まる。
「しかし、ラファエルは他の天使とは違いました。生まれもってその背に六枚の羽を有していたのです。聖力は大天使はおろか私をも遥かに凌ぐほどのものでした」
あの六枚羽には出会った頃から圧倒されていた。
ちっぽけな存在の私でさえその力を前に憧れと怯えを抱いた。
「天使は皆ラファエルの力を羨望していました。そして、羨望は時にその人を変えてしまいます。ミカエルもそうでした……」
俯いていた神がこちらを振り向くと同時に、階下から生ぬるい風がブワっと押し寄せた。
続いて湧き上がる様に闇が瞬く間に周りを埋め尽くす。
「私がそれにもっと早くに気付いていれば…」
闇に飲み込まれる寸前、神は弱々しい声と共にそう言った。

