『ラファエル、神は孤独ではありませんよ。神室にこもることはあれど神になれば全ての息づく者たちの存在を感じられます』
ミカエルが椅子に座ったことにホッと表情を和らげた神はラファエルに視線を移す。
目を閉じて我関せずのミカエルを除き、老天使もイヴもラファエルの方に視線を向けていた。
それまで腕を組んで視線を下げていたラファエルだが神の諭すような言葉に溜息を一つ吐いて、ようやく神座の方に向く。
そして、ラファエルはただ一人だけを見つめて口を開いた。
『俺は感じられるだけの存在はいらない』
その言葉は神座にいた神に向けられたのではない。
ラファエルは神座の一つ手前、大天使の椅子に座るイヴに向かって告げたのだ。
それはラファエルの表情一つで分かる。
イヴに向ける時にだけ柔らかな顔をして表情を和らげるから。
ラファエルは隣に座るイヴに手を伸ばし、頬に触れる。
イヴは何が起こっているのか分からない様子でぽかんとラファエルを見つめる。
『触れて体温を感じて抱きしめたい。全ての息づく者たちでなくたった一人の存在を。俺はイヴただ一人が傍にいてくれさえいればそれでいい』
それは大天使の地位に就く者としてあまりに勝手で無責任な言葉。
だがラファエルの瞳はどこまでも真剣だった。
対するイヴは琥珀色の瞳を目一杯開いて驚いていたが、ピンと張りつめた糸が切れる様に我に返る。
『ら、ラファエル様』
ようやく意味を理解して真っ赤な顔をするイヴ。
咄嗟に逃げを打つイヴにラファエルは小さく笑いながら手を離した。

