しかし、現状の大天使はミカエル、ガブリエル、ウリエルの三名。
私は下位天使だし、ラファエル様は魔王となっている。
やはり神の言った通り私の失われた記憶がこの過去に秘められているのだ。
『あの…神様、もう聖なる母樹の花も散り始めているのですか?』
イヴがおずおずと心配そうに聞く。
『いいえ、けれどゆっくりと私の力は弱まってきています』
神は自分の胸に手をあて目を閉じる。
『もって後百年と数か月というところでしょうか』
神がニコリと笑うもイヴは切なげに眉を寄せるだけだった。
天使にとっての百年とは人間のそれと比べ短く感じる。
『イヴ、悲しい顔をしないでください。命ある者必ずいつかは終わりを迎えます。私は十分すぎるほどこの世に存在できたのですから』
『でも……』
イヴは涙を浮かべて口を開くも、続く言葉が出てこない。
今にも泣きそうなイヴに神は困ったような嬉しそうな笑みを零す。
『しっかりなさい。貴方は大天使イヴなのですよ?』
言葉ではイヴを叱り、けれど口調は柔らかに神が言う。
『それに私がいなくなることを悲しむよりもしなければならないことがあるでしょう?』
イヴはキュッと口を真一文に結びコクンと頷いた。
神の座が空席になればあらゆる生命の存在を脅かすことになる。
神の寿命が尽きると分かっていてすることはただ一つ。

