大天使ならもう四人そろっているではないかと。
けれど確かに神はラファエル、イヴ、ミカエルの三人の名は呼んだが、あの老天使の名だけ呼ばなかった。
「神様、あの方は大天使ではないのですか?」
疑問を本人にぶつければ神は「えぇ」と言いながら頷いた。
「以前は四人揃っていましたが、そのうちの一人が粗相をして大天使の位を剥奪してからはバトラエルに代理をしてもらっていたのです。代理で大天使を選ぶことは別段珍しい事でもありませんしね」
やはりあの老天使は正式な大天使ではなかったのだ。
しかし代理と言えど大天使に選ばれるくらいなのだからあの老天使も相当な力を持った者なのだろう。
『バトラエルには申し訳ないことをしました。天界の均衡を保つためと言えど引退した貴方を引き戻すなど』
『この老天使にはもったいないお言葉です。貴方の下で天界の為に尽くせたことを誇りに思います』
眉を寄せて謝った神にバトラエルは初めて口を開いた。
ゆっくりと朗らかな口調で話すバトラエルは容姿と相まって聞いている方も落ち着く。
『もう一人の大天使を選ぶまでよろしくお願いしますね』
神はバトラエルに向かって微笑んだ後、神妙な面持ちに切り替える。
『事態は急を要しているわけではありませんが、なるべく早い時期にもう一人の大天使候補を選び、数年かけてその中から大天使を選びます』
この記憶が何年前のものか分からないが、この頃から次期神を決めるための準備は始められていたのだ。

