体を打った痛みに小さな呻き声を上げて体を起こす。

そして、私が堕ちた空間が明らかとなる。


目の前の光景はあの灰色の空間と似ていた。

樹や花などの植物はなく、ただ地平線が続くばかりの無音の世界。

足元には薄い霧が立ち込め、地面と言うよりも雲の上にいる様にふわふわとしている。

きっとこの上に堕ちたから傷もなく大事に至らなかったのだろう。

けれどここはどこだろう、またアザエルが造った異空間なのだろうか。



そう思っていると…――――




「誰かいるのですか?」


男とも女とも取れない中世的な声が木霊するように響く。

どこか懐かしく、優しい声にひかれるように振り向くが誰もいない。




「あのっ…どこにいるんですか?」


声の聞こえた方に歩きながら大きな声で叫ぶ。





「こちらです」


余りにもか細い声だったから空耳かとも思ったが、今度は先ほどよりも大きく聞こえた。

近い、と思いその声の方向に向かって駈け出す。

走るほどに霧は立ち込め視界は悪くなる。

そして、数十メートルほど走っただろうか。





チャプン…―――――



「ッ…!」


ふわふわとした地面から急に水の中へ足を踏み入れたことに驚き、思わず後ずさる。