強烈な眩暈に襲われ、目を瞑った。

それは一瞬の事だったのに、次の瞬間目を開いた時には眩い光の中にいた。



先ほどの灰色の世界とは打って変わって明るいこの空間に目が慣れず、何度も瞬きをする。

空間転移させられた衝撃で視界がぐらぐらと揺れるのが分かったが、今はそれどころではない。

堕ちているのだ、しかもものすごい高さから。

やはり高さには慣れず、恐怖で足がすくみ体に力が入らない。



しかし、助けてくれる者などいないし、私はまだここでいなくなるわけにはいかない。

恐怖と眩暈を振り切り、羽を広げる。

途端上昇気流によってフワリと浮き、一瞬堕ちていくスピードは遅くなった。

だがそれも一瞬の事で、手枷の重さと慣れない飛行に、まるで木の葉が舞うように堕ちていく。





「ッ…!くっ……」


やっと地面が見え、下から押し上げる風圧に耐えながら羽を動かす。

そして地面に叩き付けられる寸前になけなしの聖力を使って思い切り羽で風を切った。




ドンッ―――――


「ハッ…ぁ…くっ……」


寸前でスピードは殺せたものの、上手く着地できずバランスを崩して転がった。

けれど私にしては上出来の着地だ。





「はぁ…はぁ……あれ…?」


瞬発的に聖力を消費したことで息が上がり、仰向けになったまま息を整えるが、ふとあることに気付く。

打撲はあれど、あれだけ高い所から堕ちて派手に転がったにもかかわらず、擦り傷が全くないのだ。