「君にそれを知る覚悟はあるか?」

「私は……」



“ある”


そう答えたかったけれど、声は弱々しく途中で途切れ、激しい頭痛で限界を訴えていた体はラファエルに寄りかかる。





「頭が痛むのか?」


何もかもお見通しのラファエルにコクンと素直に頷いた。

寄りかかった私をふわりと抱きしめ、背中を撫でる手はどこまでも優しい。

これは失われた記憶を取り戻すなと言う警鐘なのか、私自身が拒否しているのか…

遠のく意識の中、ぼんやりと考える。

目を閉じてラファエルの胸に抱かれていれば、額に何かかざされるのが分かった。




「ッ……!」


それに覚えがあってハッと目を開く。

すると、やはりそこにはラファエルの手がかざされていた。

こうして手をかざされた時はいつも次の瞬間から意識がまどろみ、否応がなしに眠りについてしまう。




「や…ラファエル様…」


また有耶無耶にされてしまうの?

また私には何も教えてはくれないの?

涙を浮かべて見上げた私に、ラファエルは困ったように眉を寄せて笑う。




「大丈夫だ…時間はある。まずは体を休めるんだ」


心地よい声に、体が一気に重くなる。





「君が目を覚まして、それでもまだ知りたいと言うなら今度こそ話す」


ギュっと私を抱きしめるラファエル。

それを聞いて安堵し、ラファエルのもたらす心地よい眠りに誘われる様に目を閉じた。




「愛しているよ…イヴ」


ラファエルの声を遠くで聞きながら意識を手離した。