「その血はどうした」


鋭い瞳に、少し低い声。

血……?

そう思いながらも改めて自身を見て「あ…」と小さく声を上げる。

パッと手首を隠しながら口を開く。




「これは…捉えられた時に棘のある弦で縛られて…」

「これは?」


言い終わらないうちにラファエルが私の首を指で撫でる。

そう言えば首も…




「これは……アメリアさんが私の姿になるときに…」


転送の負荷が治まったのか、苦しむ様子もなく、むしろ同じように眉を寄せる表情はどこか怒っているようにも見えて…



チッ…と悪態をついたかと思えば――



『ルーカス!』


頭の中で響くラファエルの声。

すると、時間を空けずに部屋の扉を叩く音がした。




「お呼びでしょうか、ルシファー様」


いつものようにそう言って入ってきたルーカスは私と床で横たわるフェンリルを見て驚く。




「フェンリルを連れて行き治療をさせろ。イヴは俺が診る」

「はい」


有無を言わせないラファエルの命令に短く答えるルーカス。

こちらの様子を気にかけつつもラファエルの命令通りフェンリルを抱えて出て行った。