どうしてラファエル様が私と距離を置いたか。
それが分かったアメリアは俯くラファエルの前でフッと笑みを浮かべた。
そして―――――
バッ……
「ッ……!」
アメリアは目の前の広い胸の中に飛び込んだ。
「イヴ!?」
突然のことに驚いたラファエルは咄嗟にアメリアを引き離そうとする。
しかし、背中に手を回してギュッと抱きしめるアメリアは離れようとしない。
いや…やめて……
「ずっと…会いたかった」
頭を胸に埋めたまま切なさを込めた声でそう告げるアメリア。
ラファエルはハッと息を飲み、引き離そうと肩を掴んでいた手を止める。
その手がアメリアの背に回されようとするが、グッと手を握り締めて降ろされた。
「だが、君は天界へ帰りたいと…」
混乱しているのか、確かめるように私の言った言葉を繰り返すラファエル。
アメリアは動揺することなく、待っていたとばかりに口を開いた。
「はい。けれど私はラファエル様と距離を置いて思ったんです」
ピタリとラファエルの胸に抱き着いていた体を離し、ラファエルを見上げるアメリア。
「魔界に残りたいと…」
アメリアは“イヴ”として生きていくことを選んだのだ。
ラファエル様が私を天界へ帰す決断をすれば私が帰ると知ったのに、それでも演技を続ける理由は“イヴ”である方がラファエル様の愛を得られるから。
彼女は賢い判断をしたのだった。

