孤高の天使




「ッ……」


瞬間、涙が溢れそうになった。

ラファエル様……




「イ…ヴ……」


息を詰まらせるように口にした名は掠れて消えそうなほどで。

アメジストの瞳が驚愕に見開かれたまま、時間が止まった。




会えなかった日々のことが急に思い起こされる。

自分の気持ちに気付かないふりをしながら独りぼっちの部屋で過ごした日々。

広くて、暗くて…温かな笑顔がない部屋で過ごす日々は心がぽっかりと抜け落ちた様に寂しくて。

その乾いた心が潤うように熱い気持ちがこみ上げる。

いつも見せてくれていた温かな笑顔ではないけれど、姿が見れた事がこんなにも嬉しい。




けれど、久しぶりに見るラファエル様はやっぱり疲れているように見えて。

目元に疲れの色が見えるのは気のせいじゃない。





「ラファエル様?」


アメリアの声にラファエルがハッと我に返る。

ラファエルは椅子から立ち上がり目を伏せて何かに耐えるような表情をしたが、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。

それを見たアメリアは小さく笑みを浮かべ自らも近づき、二人は暖炉の前で対面した。




ドクン…ドクン……



緊張で心音が大きく鳴る。




「イヴ…何故ここに…」


躊躇いがちに口を開いたラファエルは少し距離を置いてこちらに話しかける。

「私は…」そう言って一歩踏み出したアメリアを片手で制止する。



これ以上近づくな……と。