「フェンリルッ!」
一人の男が抱えている魔獣を見て叫ぶ。
外傷はないまでも、ぐったりと横たわるフェンリルは身動き一つしない。
それを見てアメリアはフッと笑みを零し口を開く。
「準備が出来たようね」
そう言ってゆっくりと男たちの方へ飛んでいくアメリア。
「これはもう用済みよ。あの子と一緒に冥界に送ってやりなさい」
アメリアの命令にフェンリルを抱えていた男は無言で頷き、スーっと私の方へ近づき、目の前でフェンリルを私と同じようにはりつけにした。
「さぁ…私をラファエル様のところへ」
その言葉を合図にして、黒衣を纏った悪魔たちがアメリアを中心にして円状に並ぶ。
小さく唱えるそれは転送の術式の詠唱。
悪魔たち…そしてアメリアを結ぶ光の印は相当高度なもの。
きっとフェンリルの魔力を利用したに違いない。
長い詠唱が終わり、転送の術式が完成した時。
アメリアがこちらを向き、笑みを零す。
「待って!」
力いっぱいの声を張り上げて叫んだ。
しかし―――――
「そこでルシファー様に愛される私を指をくわえて見ているがいいわ」
そう言い残して、アメリアは光の印とともにラファエル様のもとへ飛んだ。

