ツー……――――
頬を一筋の涙が伝う。
「あら、涙を流しても止めてはあげなくてよ?それとも私に対しての嫌味かしら?」
冷ややかな視線と言葉が降り注ぐ。
違う…これは違うの……
アメリアの問いにも応えず頭を俯かせる。
もう誤魔化せない……
この胸の奥底にある気持ちに気づいてしまったから。
溢れる涙が止まらないことがその証明。
ラファエル様と私じゃない本物の“イヴ”が寄り添う姿を思い浮かべて胸が痛むことがその理由。
他人のふりをして愛されることにどれほど虚しいかなんて私が一番知っている。
だっては私は……
ラファエル様が好きだから――
いつから……なんて分からなくて。
気づいたら惹かれていた。
“イヴ”の代わりだと分かっていても、ラファエル様の傍にいたいと思った。
ラファエル様の“イヴ”に対する想いを知っていて、拒絶することなく…
天界へ帰る術がないからという理由を縦にして“イヴ”として傍に居続けた私は何てずるい。
私はアメリアさんを否定する権利もない。
自己嫌悪に沈んでいると、アメリアが口を開く。
「私が貴方に成りすましてルシファー様に愛されることが虚しい……確かにあなたの言う事にも一理あるわね」
細長い指が艶やかな唇に当てられ、考えるそぶりを見せるアメリア。
しかし、次の瞬間には紅い瞳を細めて微笑んだ。

