「ルシファー様は天使を憎んでいるわ。貴方が天使だと知ったらどんな反応をするかしらね」
アメリアは心底愉しそうな顔で妖艶な笑みを浮かべる。
アメリアさんはラファエル様が私の正体を知らないと思っているのね…
「けど…ただ天使だとばらすのは面白くないわ。貴方のその姿…利用させてもらうわよ」
そう言ってアメリアは私の首に爪を立て、ピッと横に引く。
「ッ……!」
肌の表面を切る痛みに思わず眉を寄せて小さな声を上げた。
ツー…と流れる血をすくい上げ、私の血で宙に全身を囲うような楕円を描くアメリア。
宙をなぞる指が最初の点に繋がった時、闇の中に鏡が現れた。
鏡の中には十字架にはりつけられた私の全身が映る。
フフッと笑うアメリアは私の耳元で囁く。
「ルシファー様は貴方のその外見が好きなだけというのを証明してあげる」
そう言って、鏡の裏へと回るアメリア。
「見ていなさい」
その声を合図にゆっくりと鏡がアメリアの方へ動く。
硬度を持ったはずの鏡は柔らかなベールのようにアメリアを覆い、眩い光が溢れる。
そして、光が弱まったのを感じて瞳を開いた先を見て驚愕に息を飲んだ。
「ッ!」
目の前には私そっくりな人。
否、私がそこにいた。
「驚いた?」
声を出すことも忘れた様に唖然とする私にクスクスと笑うアメリア。
声までもが私だった。

