ヒュー…――――
耳元で鳴る風の音。
頬を撫でる冷たい風は睫毛をふるわせ、ゆっくりと意識が浮上する。
「ッ……」
きっとさっきフェンリルの背から落ちたのが原因だろうか…
意識が覚醒し始めると共に、鈍い痛みが体に走るのを感じた。
そしてもう一つ。
体が動かない………
鈍く痛む体を動かすのが億劫だといえど、あまりにも体の自由がきかない。
「ん……ぁ…ッ…」
完全に意識が戻った時、体を走る痛みをリアルに感じた。
そして、ゆっくりと目を開くと…
「ッ……貴方は……」
「お久しぶりね」
目の前には宙に浮いた二枚羽の悪魔。
艶やかな巻き髪を夜風になびかせ、赤い唇を愉しそうに歪ませる。
「アメリアさん…」
名を呼べば一層深まる笑み。

