そう思うのは蒼い月が今にも消えてしまいそうなほど弱々しい光だからだろう。

いつもは真っ暗な夜空には丸い蒼い月が出ていて、頼りなくも淡い温かい光がそこにあることで、少しは気持ちも和らいでいた。

けれど、丸かった蒼い月は少しずつ闇に溶けて行くように欠けて行き…

今では三日月と言うにも細すぎる月が夜空に浮かんでいた。




まだ光があるだけましね…


淡い光を放つ蒼い月を見上げれば、あの日のことが鮮明に浮かぶ。

あの日は満月だった。

それを思えば、随分時が経ったことが分かる。




ラファエル様……

貴方は今どこにいるのですか?

何を思っているのですか?

ぼうっと月を見つめていると、突然グルル…とフェンリルの唸る声。





「きゃっ!どうしたの?フェンリル」


急に宙で止まったフェンリルに呼びかけるも、フェンリルは正面を見据えたまま何かを威嚇している。




暗くて…見えない……

けれど感じる。

そこに何かいると……




「誰ですか?」


震える声で口を開いたと同時にフェンリルの足元からビュンと伸びた光が瞬く間に円を作る。