ツキン……―――――


先ほどよりも強く感じる胸の痛み。

不安で…息苦しくて…

その痛みの理由さえ分からずに胸に手をあてた。





「フェンリル」


静寂に包まれた中、ラファエルの凛とした声が響く。

瞬間、暗闇の中から静かにフェンリルが現れた。

黒い靄から形を成したフェンリルはラファエルの体にすり寄り、そのサラサラした毛並みが肌を撫でる。

ラファエルはすり寄ったフェンリルをひと撫でし、無言で私をその背に乗せる。




「………?」


何の説明もなくフェンリルの背に乗せられたことを不思議に思っていると、ラファエルがフェンリルに向かって口を開く。




「イヴを連れて城へ戻れ」


短くフェンリルに告げた命令。




ザワッ……―――――

その言葉に胸がざわついた……



「ラファエル様は…?」


フェンリルにしがみつきながらも、ラファエルに問う。

すると……




「言っただろう?君から離れると」


目も合わされずに告げられる言葉。


ズキッ……―――――

まるで突き放すようなその言葉に、今度は紛れもない痛みを感じた。