今まで散々私を魔界へ引き留めていたラファエル。
それを思えば素直にその言葉を鵜呑みにしてよいものかと思ったけど…
「イヴ…俺に時間をくれ……」
強く抱きしめる力に反して弱々しい声。
ラファエル様は本気なんだ……
そう思った瞬間――――
ツキン……
小さく胸を刺す痛み。
その痛みの訳を考える間もなくラファエルが口を開く。
「俺の存在が君の笑顔を奪っていると言うことは分かっている…」
ヒュッと息を飲む音が耳元で聞こえ…
「だからイヴ…俺が決断するその時まで待っていてくれ」
そう言って離れていく身体。
先ほどと同じようにヒュッと二人の間を風が通り過ぎるが、恐怖を感じることはなかった。
ただ、目の前のラファエルから目が離せない。
まるで私から目を逸らすように外される視線。
あの優しいアメジストの瞳に自分が写っていないことがこんなにも不安なんて…

