待機していた陸を走る鉄の塊に箱が整然と隙間なく並べられるとミンナとは対照的な顔立ちをした背の低い男が身振り手振りで値切り交渉を開始した。

 背の低い男が指を3本立てケースに入った飲み物を差し出すとミンナの代表者が渋りながら握手に応じた。どうやら言葉の壁を乗り越えて交渉が成立したらしい。

 陸を走る鉄の塊に乗って背の低い男が引き上げると、海に浮かぶ鉄の塊でささやかな宴がはじまり、アルコールのニオイがする液体を浴びるように飲んではしゃぎすぎた男が代表者に注意されることがあっても、周りの男たちは指をさして笑い場が白けることはない。

 鉄の塊に歩み寄った。
「見ろよ、汚ったねぇ犬がやってくるぜ」
 一人の男が嘲るように笑うと他のミンナもつられて鼻で笑った。

「なに言ってんだ。かわいいじゃないか」
 擁護してくれたのはクシャミしたとき目が合った男。

「ワン」
 ひと声吠えるとその男が鉄の塊から降りてきた。

「おい、毛が抜けてるぞ」
「きっと皮膚病だぜ、触らないほうがいい」

「気にすることないぞ」
 ミンナの忠告を無視してその男は話しかけてきてくれた。

「狂犬病じゃないのか?」
「馬鹿野郎!日本には1957年以降、狂犬病の発生は認められていないんだぜ」

 両手で摑まれたまま顔を左右に揺さぶられ、手荒なスキンシップを受けているうちに男が首のアクセサリーに気づき、興味を示した。

「おい、首輪にカラシニコフって彫ってあるぞ!」
 その一言でミンナが集まる。